人手不足の解消に、外国人労働者の雇用を考える企業が増えています。中でも特定技能は国も力を入れて受け入れ態勢を強化している、今注目の在留資格です。

しかし特定技能がどんな資格かよくわからないどうやって受け入れたら良いのか知りたいと考える人も多いのではないでしょうか。

今回は特定技能1号・2号の違いを含め、どんな職種の企業でどのように受け入れられるのか、わかりやすく解説していきます。

そもそも特定技能とは?

特定技能とは、2019年に創設された日本の人手不足解消を目的とした在留資格で、1号と2号の2種類があります。

特定技能1号は、深刻な人手不足といわれる特定産業分野16分野で外国人労働者の受け入れが可能な資格です。(法改正により受け入れ分野は変更される可能性があります。詳しくは出入国在留管理庁のHPをご確認ください。)

出典:出入国在留管理庁HP 

特定技能2号は、1号のうち11分野が対象です。(介護、自動車、鉄道、林業、木材以外の分野)熟練した技能が必要であり、試験で求められる基準も高くなります。

特定技能の資格取得には、一定の技能と日本語能力が備わっていることが条件であるため、外国人労働者を即戦力として雇い入れることが可能です。

外国人側の特定技能に関する要件

特定技能1号を取得するためには、日本語と技能両方の要件をクリアしている必要があります。それぞれ必要な要件は以下のとおりです。

日本語レベル日本語能力試験N4以上、または国際交流基金日本語基礎テスト(JFT-Basic)A2レベル程度(※分野によってはN3以上が必要)
技能レベル各分野・業務ごとに定められた試験に合格※技能実習2号を良好に修了している場合は免除

日本語能力試験は例年7月・12月に、JFTは毎月国内外で開催されています。技能試験の内容は各分野で異なりますが、実技と学科に分けられ、従来の筆記試験のほか、近年ではコンピューターを用いた試験も導入されています。

各分野の試験受付HPで試験実施要領試験サンプルが公開されているのでご確認ください。

特定技能2号は技能試験のみで日本語試験はありません。試験により求められる技能水準をクリアすれば取得が可能です。詳細は各分野の試験受付HPをご確認ください。

また、1号2号に共通して求められる条件は以下のとおりです。

・18歳以上であること
・健康状態が良好であること

日本における成人年齢に達していなければ雇い入れはできないため注意が必要です。

特定技能外国人を受け入れる企業の要件

特定技能で外国人を雇い入れる企業や個人を受入機関といいます。受入機関になるためには、下記のような一定の要件をクリアしている必要があります。

・特定産業分野のいずれかの職種であること
・受入機関自体が適切であること
・外国人労働者と適切な労働契約を結ぶこと
・外国人を受け入れる体制が整っていること
・外国人を支援する計画が適切であること
・その他、労働法・入管法などの違反がないこと

機関としての適性や支援体制が整っていることが要件となるため、受け入れ準備はしっかりと行っていきましょう。

特定技能【1号・2号】の違い

以下の通り、特定技能1号・2号の違いを表でまとめました。

※1号について介護の場合は介護日本語評価試験が別途あり
出典:出入国在留管理庁 説明資料

1号は更新すれば通算5年在留することが可能です。もし5年以上の滞在を希望する場合は、特定技能2号やほかの在留資格への切り替えが必要になります。

1号を取得するには、技能および日本語の試験に合格している、または技能実習2号を良好に修了していることが条件です。

2号は更新回数の制限がないため、更新し続ける限り在留が可能です。永住許可取得の要件である10年以上の在留も目指せるでしょう。

また、家族帯同は認められていますが、配偶者と子に限られます。親や兄弟姉妹は認められていないため注意が必要です。

そして在留資格の2号に関する技能試験に合格していることが条件です。日本語に関しての試験はありません。

特定技能は技能実習と何が違うのか

技能実習は人材育成のための制度として創設されました。日本で学んだ技術を母国に持ち帰ってもらい、国の発展に寄与することが目的です。

そのため技能実習は受け入れ時に日本語能力や技能は求められておらず、未経験者採用と同じように一から育てる必要があります。

一方で、特定技能は就労のため、さらに言うと人手不足を補うために設けられた在留資格です。

つまり技能実習と特定技能は、根拠となる法律も異なり趣旨や制度目的において別の制度ということになります。

在留資格の技能実習から特定技能へ切り替えは可能

技能実習は最長5年で帰国することを前提とした制度ですが、2号を良好に修了すると特定技能1号へ切り替えることができ、長期的な滞在も可能です。

ただし、技能実習と特定技能の対象職種はそれぞれ異なります

技能実習で行っていた業務が、そもそも特定技能の対象になっていないというときは、2号を良好に修了していても特定技能には切り替えられません。

その場合、希望する特定技能の試験に合格することで特定技能へ切り替えることができます。

「留学」から「特定技能」に切り替えも可能

特定技能は実務経験がなくても、試験合格で取得できる資格です。日本の大学や専門学校の在学中に特定技能試験に合格すれば、留学から特定技能資格へ切り替えることができます。

特定技能外国人について支援の流れ

特定技能で外国人を受け入れるための具体的な流れを説明します。

出典:日本商工会議所 外国人材活用解説ガイドブック

特定技能外国人の受け入れは大きく3つのフェーズに分けられます。また、時間軸として採用から就労開始まで平均して3~6カ月程度必要です。

しかしこの流れを企業が単独で行うことは、特に初めての特定技能受け入れでは難しいと感じられることでしょう。

また、直近2年間で外国人の受け入れ実績がない企業は、自社支援としての要件を満たせていません。そのような場合は登録支援機関に支援業務を委託することで解決できます。

外国人を支援する登録支援機関について

登録支援機関とは、特定技能で働く外国人を支援する機関であり、登録申請により支援機関として登録された個人または団体のことです。

受入機関と支援委託契約を結び、特定技能外国人の支援計画の策定と計画の実施を行います。

登録支援機関が行う主なサポートには、義務的支援として以下のようなものが求められています。

・事前ガイダンス
・出入国の送迎
・住宅、生活必需品など日本における生活のサポート
・日本での生活についてのオリエンテーション
・公的手続きの同行
・日本語学習の機会提供
・生活面、仕事面での相談・苦情対応
・日本人との交流促進
・転職支援
・定期的な面談、行政対応
※それぞれの詳細は出入国在留管理庁のHPをご確認ください。

特定技能所属機関(受入れ機関)について

特定技能所属機関(受入機関)とは、特定技能の外国人労働者を雇用する企業や個人事業主のことを言います。

受入機関は外国人労働者と適切に雇用契約を結び、出入国管理法や労働関係法令を適切に守りながら、契約を履行することが必要です。

また、受入機関として以下のような細かい基準が設けられています。

・欠格事由に該当しないこと
・過去に解雇を行っていないこと
・給与を原則口座振込にしていること
・法令を順守していること
・行方不明者を出していない
・保証金や違約金などの契約をしない

受け入れた外国人の失踪は大きな問題ですので、違法な失踪者を雇用することがないように注意し、雇用契約締結後も注意していきましょう。

また、外国人本人やその親族がブローカーなどに違約金や保証金の締結をさせられていることを知りながら雇用契約を結ぶことも禁じられています。

雇用前のヒアリングをしっかり行いましょう。

特定技能外国人を雇う費用

特定技能で外国人を雇い入れるには様々な費用がかかります。分野によって負担額は異なりますが、下記は海外から招聘した際の一般例をまとめたものです。

海外より特定技能外国人を招聘した場合

入国の前後で掛かる費用

項目費用備考
送り出し機関手数料約10万円〜月給の1か月分など国によって徴収しないケースもある
人材紹介手数料40万円前後
渡航費用国別による例)フィリピンの場合70,000円
健康診断費用実費
在留資格取得申請費用10万円程度行政書士に依頼した場合に掛かる費用

以上のように入国前後でおおよそ合計で50~60万円程度となります。また、入社後は以下の費用が掛かります。

入社後に掛かる費用

項目費用備考
住居費用負担別途就業規則による
本人給与別途毎月
在留資格申請費用(更新都度)6万円程度行政書士に依頼した場合に掛かる費用

入社後に登録支援機関を活用する場合に支払う費用

項目費用備考
月額支援費約2.5~3万円

日本人を雇い入れるケースと異なり、都度更新の在留資格申請費用(6万円前後)や、月額支援費(年間30~36万円)を見ておく必要があります。

国内の特定技能人材を採用する場合

ただし、国内の特定技能人材を採用する場合は以下の通り、送り出し機関への費用や渡航代金などが掛からない形です。

国内の特定技能人材を採用する場合

項目費用備考
送り出し機関手数料約10万円〜月給の1か月分など国によって徴収しないケースもある
人材紹介手数料40万円前後
在留資格変更申請10万円程度行政書士に依頼した場合に掛かる費用
住居費用負担別途就業規則による
本人給与別途毎月
在留資格更新申請6万円程度行政書士に依頼した場合に掛かる費用
月額支援費約2.5~3万円登録支援機関に支払う

建設で特定技能人材を採用する場合

なお、建設業で特定技能人材を受け入れた場合は、以下の費用が追加で発生します。

JAC※受け入れ負担金12,000円/月毎月
建設キャリアアップシステム新規登録2,500円5年ごと
建設キャリアアップシステム事業者登録6,000円5年ごと
建設キャリアアップシステム管理者ID料11,400円/年毎年

※キャリアアップシステムについては公式ページを参照ください。
※JACとは一般社団法人 建設技能人材機構を指す
※キャリアアップシステムについては行政書士へ依頼する場合、別途費用が必要

特定技能外国人を雇用するうえでのポイント

特定技能の受け入れには職種の制限、資格の取得、受け入れ体制の整備、定期的な行政手続きなど、対応すべきポイントがいくつもあります。

大半の部分は登録支援機関への委託や、サポートを受けながら実施すれば問題はありません。

ただし、特定技能は転職が認められていることに注意しておきましょう。

せっかく費用と時間をかけて雇い入れたとしても、会社として労働環境や待遇が悪ければ、より良い企業を求めて労働者が転職を考えることは自然なことです。

企業側が労働者を選んでいると同時に、外国人側からも選ばれた企業という認識を持ち、誠意をもって対応していくことが大切です。

賃金や法定福利は日本人社員と同等以上にすること

特に賃金や福利厚生などの待遇は日本人と同等、もしくはそれ以上にする必要があると定められています。

特定技能は技能・日本語能力とも一定の能力を持っているため、日本人の雇い入れとそう変わりません。労働時間、休日、休暇など労働条件においても適切な運用が求められます。

まとめ

今後も日本全体で人手不足の深刻な状況が続いていくとみられる中、特定技能が人手不足解消の一役を担う制度であることは間違いありません。

しかし受け入れには様々なハードルがあり、気を付けておくべき重要なポイントがたくさんあります。

雇い入れを検討する前に制度を正しく理解し、受け入れ体制をしっかり整えたうえで雇い入れるようにしましょう。