近年、外国人労働者の雇用を検討する企業が増えています。

数ある在留資格の中でも特定技能と技能実習が注目されていますが、

・違いがよくわからない
・自分の会社ではどちらを選ぶべきなのか知りたい

とお悩みではないでしょうか。

そこで今回は特定技能と技能実習、それぞれのメリット・デメリットとともにその違いを詳しく解説していきます。正しく理解することで外国人採用がスムーズにいき、人手不足の解消や社内の活性化にもつながります。

特定技能と技能実習の違いを比較

特定技能と技能実習は比較検討されることの多い在留資格ですが、全く別の制度ですので内容は大きく異なります。

まとめると以下の表になりますが、一つずつ解説していきます。

特定技能と技能実習の違いを比較

出典:新たな外国人材の受入れ及び共生社会実現に向けた取組|出入国在留管理庁

目的や制度の違い

特定技能と技能実習は制度の趣旨・目的が大きく異なります。

特定技能は人材不足の解消を目的とした制度ですが、技能実習は日本で習得した技術を母国に持ち帰ってもらい、国の発展に寄与するという国際貢献を目的として制定された制度です。

迅速に人手不足を補いたいのか、時間をかけてでも技術を学びたい外国人を育てるのか、雇い入れる目的によって制度を使い分ける必要があります。

また、特定技能は「出入国管理及び難民認定法」、技能実習は「技能実習法」に基づいて定められており、そもそも根拠となる法律が異なるという点で全く別の制度ということになります。

在留期間の違い

技能実習は2号までで最長3年、3号までいくと最長で5年の在留が可能で、特定技能1号も更新することで通算5年まで在留できます。

技能実習の在留期間と目的

特定技能の在留期間と目的

特定技能2号になれば更新回数の上限がなくなるため、更新される限り永続的に日本で就労できることになります。さらに長期間滞在していれば、いずれ永住許可の申請も可能です。

職種の違い

職種の違い

特定技能も技能実習も受け入れられる業種・職種が制限されているうえに、受け入れ対象がそれぞれ異なります

現在、技能実習は建設・食品製造など90職種(166作業)と幅広く設定され、未経験でも技能を習得しやすいよう作業ごとに細かく分かれています。ただし、今後も職種が拡大する可能性もありますので適宜、厚生労働省のHPを確認してみてください。

特定技能は介護・建設・農業など12分野に限られていますが、こちらも今後は拡充予定ですので出入国管理庁のHPを確認するとよいでしょう。

受け入れを検討する際には、まずご自身の企業の業種・職種が技能実習と特定技能のどちらに該当するのかを確認しましょう。

技能実習から特定技能に移行は可能

技能実習(2号までの計3年)を良好に修了した場合、特定技能2号に移行することは可能です。しかし、技能実習の職種・作業内容が、特定技能1号の業務と関連性が認められる必要があり、すべての技能実習生が移行できるわけではありません

また、技能実習の職種や作業内容と関係のない特定技能の業種に移行したい場合は、技能試験と日本語試験の両方に合格する必要があります。

技能水準の違い

技能水準の違い

技能実習は知識や技能の習得を目的としているため、ほとんどが未経験の状態からのスタートです。基本的な作業からはじまり、徐々に経験を積んでいきます。

一方、特定技能は人手不足解消のための制度であることから、技能実習を修了または試験に合格し一定の技能を持ち合わせており、即戦力として活躍が期待できます。

日本語レベルの違い

技能実習は受け入れ時に日本語能力を求められていないため個人差があります

最初は意思疎通が難しいケースもありますが、入職前に監理団体が日本語などの講習を行うことが義務付けられているため、仕事を始める時点では最低限のコミュニケーションが取れる状態になっています。

特定技能は1号取得の際に日本語能力試験N4レベル以上が必要なため、日常会話程度であればあまり問題ないことがほとんどです。

どちらにしても実際の現場で日本語のコミュニケーションが不可欠ですから、受け入れ後の日本語学習も重要になります。

受け入れ人数の違い

技能実習は受け入れ企業ごとに人数制限が設けられています

例えば、常設の職員(社会保険加入者など)が30人以下の企業であれば、1年間に受け入れられる技能実習生は3人までです。

常設職員が31~40人であれば4人、と常設職員数が多くなるほど受け入れ人数の上限も増えていきます

一方で特定技能は原則として企業ごとの人数制限はありませんが、日本全体で業種別に受け入れの上限数が決められています

令和6年4月から5年間の受け入れ見込み数は介護で13万5000人、新たに追加された自動車運送業は2万4500人※、というように業種により幅があります。

ただし、建設・介護分野は企業ごとにも人数枠が設定されているので注意が必要です。

※参考資料:出入国在留管理庁 特定技能制度の受入れ見込数の再設定

給与と費用の違い

技能実習の給与は最低賃金を守り労働法等に準拠していれば問題ありません。

特定技能は一定の技能を持っている前提から、日本人と同等またはそれ以上の給与水準である必要があります。

また、給与とは別に採用から受け入れまで様々な費用がかかってきます。

利用する団体や採用ルートにより差がありますが、日本人の採用コストとあまり変わらないケースが多いでしょう。

技能実習は主に入国に関する費用(渡航、在留資格申請、講習など)や日本に滞在するための身辺準備、監理団体の監理費等で初年度におよそ100万円前後、2年目以降は監理費等で40~50万程度が必要になります。

特定技能は人材紹介料や在留資格申請、登録支援委託などで、技能実習と同じく初年度は100万円前後、2年目以降は登録支援委託費等で30~50万円程度となる場合が多いです。

監理組合&登録支援機関の違い

監理組合は技能実習生を受け入れる企業の依頼に基づいて、技能実習生の募集や受け入れの手続きを行い、受け入れ先の指導や監査も行う団体です。監理組合になれるのは非営利団体のみです。

一方、登録支援機関は特定技能の受け入れ企業から委託を受けて、支援計画の作成などにより特定技能1号の活動を円滑に行うためのサポートをする機関です。一定の条件に当てはまる企業や団体が支援機関になれます。

定期面談・報告のタイミングも異なる

定期面談・報告のタイミングも異なる

技能実習の監理団体では3ヵ月に1度の定期監査、不定期の臨時監査、1ヵ月に1度の訪問指導などが定められています。年1回の事業報告のほか、計画の変更などの届出は都度申請する必要があります。

特定技能の登録支援機関も2024年から対面による面談が義務化されました。外国人本人、受け入れ企業両方との面談が必須で、3ヵ月に1回程度実施する必要があります。また、四半期ごとに管轄する出入国管理局へ各種報告書の提出が必要です。

試験の違い

技能実習は受け入れ時の試験はありませんが、1号~3号のそれぞれ修了前に実技や学科試験を受けなくてはいけません。

万が一、不合格となった場合は一度だけ再受検が可能ですが、再受検でも不合格になってしまうと残念ながら帰国しなければならなくなります。

特定技能1号になるためには技能試験、日本語試験を突破する必要があります。ただし前述の通り、技能実習2号を良好に修了している場合は試験が免除されます。

特定技能2号になる場合は試験に加えて十分な実務経験が必要です。2024年の試験合格率は約36%と決して簡単な試験とは言えないので、試験対策をしっかりしておきましょう。

家族帯同の違い

技能実習は技能を国に持ち帰ることが前提で、長期的な就労が目的ではないため家族帯同は認められていません

特定技能1号も認められておらず、現状では特定技能2号のみ帯同が可能です。

2号は在留期限更新の上限もなく、更新される限り日本に滞在できるので家族とともに長期滞在が目指せます。

転職できるかの違い

技能実習は基本的に転職は認められていませんが、やむを得ない事情がある場合や2号から3号に移行する際に例外的に認められる場合があります。

また、技能実習から特定技能に移行する際の転職は可能です。

特定技能は日本人と同様に自由に転職が認められています。ただし、同じ特定技能として転職する場合でも、在留資格変更手続きが必要ですので転職先の協力が欠かせません。

まずは該当する業務・職種から在留資格を選択する

外国人を雇用するには、業務内容と在留資格で認められる業務範囲が一致している必要があります。

いくら外国人を採用したいといっても、業種が対象外であれば在留資格を取得できませんし、制度趣旨に反した採用もできません

まずは外国人労働者の受け入れを希望する業種・職種から、対象の在留資格を検討してみましょう。

双方のメリット・デメリットまとめ

そして、双方のメリット・デメリットをまとめると以下です。

特定技能について

特定技能:メリット・デメリットまとめ

技能実習について

技能実習:メリット・デメリットまとめ

まとめ

特定技能と技能実習のどちらの制度も、受け入れ企業がそれぞれ対象の業種・職種に当てはまっていることが大前提です。

そのうえで即戦力として雇い入れるのか、時間をかけて育てるのか、雇い入れる目的を明確にして、制度の趣旨・目的にあった在留資格を選択しましょう。

受け入れにかかるコストやスキルなど、メリット・デメリットも考慮しながら比較検討することをおすすめします。