「求人を出しても人が集まらない」
「採用できてもすぐ辞めてしまう」
製造現場でこうした声が当たり前になって久しい中で、選択肢として特定技能外国人の受け入れを考え始めた企業も多いのではないでしょうか。
ただ、制度が複雑そうで、何から手をつければいいか分からない。費用も読めないし、すぐ辞められたら困る。そんな不安から、最初の一歩を踏み出せずにいるのではないでしょうか。
そこで本記事では、工業製品製造業で特定技能外国人を受け入れる際の対象業務・手続きの流れ・費用の目安までを、できるだけ噛み砕いて解説します。
読み終えたとき「これなら自社でも進められそうだ」と感じてもらえれば幸いです。

製造現場が抱える問題と不安

まずは製造現場が抱える人手不足の実情と受け入れに伴う不安について解説します。
工業製品製造業が抱える慢性的な人手不足
金属加工、溶接、機械保全、塗装、組立。こうした工程を支える人材の確保は、年々難しさを増しています。背景にあるのは、若手の製造業離れと、熟練工の高齢化・退職です。
ベテランが一人抜けるたびに技能が現場から失われ、残った人に負荷が集中する。求人広告を出しても応募が来ず、来ても定着しない。この悪循環に心当たりがある企業は少なくないはずです。
特に地方や中小規模の工場では、日本人の若手採用だけで必要な人数をそろえるのは、もはや現実的とは言いにくくなっています。
だからこそ、国内の採用市場だけに頼らない人材確保の手段を持っておくことが、現場を止めないための備えになります。その有力な選択肢が特定技能です。
外国人材の受け入れにまつわる不安
一方で、外国人材の受け入れに不安を感じるのは自然なことです。よく聞かれるのは「手続きが複雑ではないか」「言葉が通じず現場が混乱しないか」「コストがいくらかかるか読めない」「採用してもすぐ辞めてしまわないか」といった声です。
これらの不安は、裏を返せば事前に潰しておけるポイントが明確だということでもあります。手続きは外部の専門機関に任せられますし、費用も項目ごとに見通しを立てられます。
定着についても、受け入れ体制づくりで大きく変わります。この記事では、こうした不安を一つずつ解消していきます。
特定技能とは?工業製品製造業が対象になった背景

そもそも特定技能とはどんな制度なのか、まずは土台となる仕組みを押さえましょう。
即戦力として働ける特定技能
特定技能とは、人手不足が深刻な産業分野で、一定の技能と日本語能力を持つ外国人を受け入れるための在留資格(外国人が日本で働き暮らすための公的な資格)です。最大の特徴は、最初から即戦力として現場で働ける点にあります。
同じ業務であれば日本人と同等以上の報酬を支払う必要があり、対等な働き手として迎える制度だと理解しておくとよいでしょう。
3分野が「工業製品製造業」に統合された最新の制度状況
かつて製造業の特定技能は「素形材産業」「産業機械製造業」「電気・電子情報関連産業」という3つの分野に分かれていました。これらが再編され、「工業製品製造業分野」として一つにまとまった経緯があります。
統合によって対象となる業務の範囲が整理され、以前は対象外だった作業が含まれるようになるなど、受け入れの間口は広がる方向にあります。
ただし、制度の区分や対象範囲は改正が重ねられている領域です。自社の業種が今どう位置づけられているか、最新の枠組みは公的機関の情報や専門家への確認をおすすめします。古い情報のまま「うちは対象外だ」と判断してしまうのは、もったいないケースもあります。
工業製品製造業の対象業務をチェック

受け入れを考えるうえで最初の関門が「自社の作業は対象なのか」という確認です。ここを具体的に見ていきます。
工業製品製造業で受け入れできる業務区分とは
工業製品製造業分野では、製造現場の幅広い工程が対象に含まれます。代表的なものとして、機械金属加工、溶接、仕上げ、塗装、めっき、鋳造・鍛造、機械保全、電子機器組立、プリント配線板製造、プラスチック成形などが挙げられます。
特定技能外国人は、こうした区分に対応する技能試験に合格していることが前提です。
自社の作業が当てはまるかの確認方法
「うちの作業がどの区分に入るのか分からない」という場合、確認の出発点は自社の業務内容を工程ごとに洗い出すことです。
ただし、対象区分の細かな定義や、どの試験区分が必要かは制度上の規定に沿って判断する必要があります。区分の当てはめは、その後の試験要件や採用ルートにも関わる入り口の部分なので、専門家に相談してしまうのが早道です。
工業製品製造業の特定技能|受け入れの流れ

ここからは実際の手続きに触れていきます。全体像をつかんでおきましょう。
受け入れの準備
採用に動き出す前に、受け入れる側として整えておくべき土台があります。
受け入れ要件の確認
まず確認するのは、自社が受け入れ機関(特定技能外国人を雇用する企業)としての要件を満たしているかです。代表的なものとして、労働関係法令や社会保険を適切に守っていること、過去に出入国関連の重大な違反がないこと、外国人を支援する体制を確保できることなどがあります。
「製造業特定技能外国人材受入れ協議・連絡会」への加入
工業製品製造業をはじめとする製造業分野では、受け入れを行う企業が分野ごとの協議会(制度の適正な運用のために国が設けた組織)に加入することが求められます。
製造業の場合は「製造業特定技能外国人材受入れ協議・連絡会」がこれにあたります。加入には所定の手続きが必要で、外国人が働き始める前に済ませておく流れになります。手続きの詳細や時期は変わることがあるため、最新の案内を確認しながら進めると安心です。
募集と採用
受け入れの土台が整ったら、いよいよ人材の募集です。採用ルートは大きく分けて、すでに日本国内にいる特定技能の資格を持つ人を採用する方法と、海外から新たに呼び寄せる方法があります。国内採用は比較的早く就労につなげやすく、海外採用は人数を確保しやすいといった違いがあります。
自社だけで適した人材を見つけるのが難しい場合は、人材紹介を活用して候補者と出会う方法が一般的です。技能試験に合格しているか、日本語でのコミュニケーションがどの程度可能かなど、現場が求める水準に合うかを面接で見極めていきます。
雇用契約の締結と支援計画の作成
採用が決まったら、雇用契約を結びます。報酬は同じ業務に就く日本人と同等以上であることが求められ、労働時間や待遇についても適正であることが前提です。
あわせて作成するのが支援計画です。これは、来日して働く外国人が職場と生活になじめるよう、企業がどう支えるかをまとめた計画書を指します。生活オリエンテーション、住居の確保、行政手続きの同行、相談対応など、支援すべき項目が定められています。
実際の支援は自社で行うこともできますが、登録支援機関(外国人の生活サポートを企業に代わって担う、国の認可を受けた機関)に委託することもできます。
在留資格の申請・変更
雇用契約と支援計画が整ったら、在留資格に関する手続きを行います。海外から呼び寄せる場合は在留資格認定証明書の交付申請を、すでに国内にいる人を採用する場合は在留資格の変更申請を、出入国在留管理庁に対して進めます。
この申請には多くの書類が必要で、不備があると審査が長引きます。慣れていないと負担が大きい工程ですが、書類作成は行政書士など専門家に支援を依頼できる部分です。審査には一定の期間がかかるため、就労開始の希望時期から逆算して、余裕を持って動くことが大切です。
就労開始後の届出
在留資格が認められ、外国人が実際に働き始めた後も、手続きは続きます。受け入れ機関には、定期的な届出の義務があります。たとえば、雇用や支援の状況、契約内容に変更があった場合の報告などです。
これらの届出を怠ると、その後の受け入れに影響が出ることもあります。とはいえ、何をいつ出すかが決まっている定型的な業務なので、支援を委託していれば届出のサポートも受けられることがほとんどです。社内で抱え込みすぎず、仕組みで回せるよう整えておきましょう。
気になる費用は?受け入れにかかるコストの内訳と目安

受け入れに踏み切れない理由として、費用の見えにくさは大きいものです。何にいくらかかるのか、項目ごとに分解して考えましょう。
採用・支援にかかる費用の内訳
特定技能の受け入れにかかる費用は、大きく「採用にかかる費用」と「受け入れ後の支援にかかる費用」に分けて考えると整理しやすくなります。
採用にかかる費用には、人材紹介を利用する場合の紹介手数料、海外から呼び寄せる場合の渡航関連費用などがあります。受け入れ後には、支援を外部に委託する場合の月々の支援委託費、各種申請にかかる費用などが発生します。
金額の相場は採用ルートや委託範囲によって幅がありますが、一人の採用にかかる初期費用はおよそ50万円〜80万円です。
自社で支援するか登録支援機関に委託するかの判断ポイント
費用を左右する大きな分岐が、支援を自社で行うか、登録支援機関に委託するかです。自社で行えば月々の委託費は抑えられますが、支援できる体制構築と担当者の工数が必要になります。
多言語での相談対応や行政手続きの同行など、現実的に自社でこなせるかを見極めなければなりません。
一方で委託すれば費用はかかるものの、専任担当を置かなくても受け入れを始められるのが利点です。自社の体制と照らして、無理のない形を選ぶとよいでしょう。
関連記事:特定技能の登録支援機関|役割・費用・選び方を5分で解説
特定技能の自社支援とは?委託との違い・要件・費用をまるごと解説
受け入れ後に長く活躍してもらうために

採用はゴールではなくスタートです。せっかく受け入れた人材に長く力を発揮してもらうための視点を押さえましょう。
すぐ辞められないための受け入れ・支援体制づくり
「採用してもすぐ辞めるのでは」という不安への答えは、受け入れ体制にあります。早期離職の多くは技能の問題よりも、生活面の孤立やコミュニケーションのすれ違いから生まれます。来日直後の生活立ち上げを支え、現場で気軽に相談できる相手をつくる。こうした地道な支えが定着を大きく左右します。
具体的には、住居や生活ルールの丁寧な案内、定期的な面談、現場リーダーによる声かけなどが効きます。「働きやすい」と感じてもらえる職場づくりこそが、最大の定着策です。支援計画に沿った対応を形だけで終わらせず、実態のある支えにしていくことが、長く活躍してもらう近道になります。
長期雇用のカギ「特定技能2号」への移行
特定技能には1号と2号という区分があります。1号は在留できる期間に上限がありますが、より高い技能を持つ人が対象となる2号へ移行できれば、在留期間の更新を続けながら長期にわたって働いてもらえる道が開けます。家族の帯同が認められる可能性が広がる点も、本人の定着意欲につながります。
工業製品製造業でも2号への道は整備が進められています。優秀な人材に「この会社で長く働きたい」と思ってもらうために、技能を高めながら2号を目指せるキャリアの道筋を示すことは、有効な定着策になります。
制度の具体的な要件は変わりうるため、活用を考える際は最新情報を確認しながら計画を立てましょう。
関連記事:特定技能とは?〜1号・2号の在留資格を含めわかりやすく解説〜
工業製品製造業の特定技能受け入れは専門家への相談から
受け入れをためらわせていた不安の多くは、正しい手順と適切なパートナー選びで解消できます。
とはいえ、自社の業種が対象に当てはまるか、どのルートが最適か、費用はどの程度かは、ケースによって答えが変わります。一般論をいくら読んでも、最後は自社の状況に当てはめた相談が必要になります。
まずは「自社の場合はどうなるか」を、気軽に聞いてみるところから始めてみませんか?
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