「求人を出しても人が集まらない」
「採用してもすぐに辞めてしまう」
神奈川県で介護施設を運営していると、こうした悩みは年々深くなっているはずです。日本人スタッフだけで現場を回すのが難しくなっている今、選択肢として注目されているのが特定技能外国人の採用です。
ただ、制度が複雑で、何から始めればいいか分からないという声も多く聞きます。
この記事では、神奈川県の介護施設が特定技能制度を使って人手不足を解消するために必要な情報を、初めて検討する人にも分かるようにまとめました。
神奈川県の介護施設が直面する人手不足の現状

神奈川県の介護現場は、全国でもとくに厳しい人材難に直面しています。
神奈川県は高齢者人口が急増している地域です。横浜市や川崎市を中心に、団塊世代が後期高齢者になるタイミングを迎え、介護サービスの需要はこれからさらに伸びていきます。
一方で働き手は減り続けていて、求人を1件出しても、応募はほとんど来ないという施設も珍しくありません。
人手不足の背景にあるのは、若年層の介護離れと、賃金水準の課題、そして他業種との人材の取り合いです。
とくに首都圏では物流・小売・飲食といった業界が高い時給で求人を出すので、介護職に若い人が流れにくい構造があります。
このまま日本人だけで採用を続けようとすると、施設の稼働を維持するのが難しくなる可能性があります。だからこそ、外国人材の活用を本気で検討するタイミングに来ているわけです。
特定技能制度についての基礎知識

外国人材の受け入れには複数の制度があり、それぞれ目的も使い方も違います。まずは制度の全体像を押さえます。
特定技能制度の概要
特定技能制度は、人手不足が深刻な分野に外国人材を受け入れるために作られた在留資格です。
対象となるのは、介護、ビルクリーニング、建設、農業、外食業など、特定の業種に限定されています。これらの業種では国内で人材を確保するのが難しいと国が認めていて、一定の技能と日本語能力を持つ外国人を即戦力として受け入れることが認められているのが特徴です。
特定技能には1号と2号があります。1号は通算5年まで在留でき、家族の帯同は原則として認められません。2号は在留期間の更新に上限がなく家族の帯同も可能です。
特定技能「介護」とは?
特定技能「介護」は、介護分野で働くことを目的にした在留資格です。
取得するには3つの試験に合格する必要があります。介護技能評価試験、介護日本語評価試験、日本語能力試験(N4以上)またはJFT-Basicです。
これらに合格した外国人は、利用者への身体介護を含む介護業務にあたることができます。
神奈川県内であれば、特別養護老人ホーム、介護老人保健施設、有料老人ホーム、デイサービス、グループホームなどが受け入れ先になります。
受入れ後は日本人と同等以上の報酬を支払うことが義務付けられていて、安い労働力としては扱えない仕組みになっています。
EPA・在留資格
外国人介護人材の受け入れには、特定技能のほかにも複数のルートがあります。
EPA(経済連携協定)は、インドネシア・フィリピン・ベトナムの3カ国と結ばれた協定で、介護福祉士の資格取得を目指して来日するルートです。
在留資格「介護」は、介護福祉士の資格を取得した外国人が、期間制限なく働けるものです。
それぞれの違いを簡単にまとめると、EPAは「資格取得を目指す」、在留資格「介護」は「資格取得後の長期就労」、そして特定技能は「即戦力として迎え入れる」という位置づけになります。
施設の状況や採用の目的に合わせて、どの制度を使うかを選ぶことになります。
特定技能外国人に任せられる介護業務

特定技能外国人は、日本人スタッフと同じ介護業務を担当できます。
具体的には、入浴介助、食事介助、排せつ介助といった身体介護が中心です。これに加えて、レクリエーションの実施、機能訓練の補助、移乗・移動の介助、見守りや声かけといった日常的な介護業務もすべて任せられます。
書類作成や記録業務についても、日本語能力に応じて段階的に対応してもらえます。
また、訪問介護も2025年より業務として行ってよいことになりました。
夜勤に入ってもらうことも可能です。夜勤に関しては、就労後一定期間が経過してからという運用ルールを設けている施設が多く、いきなり一人で夜勤を任せるわけではありません。
役割としては、特定技能外国人は補助的な人手ではなく、現場の主戦力として位置づけられる存在だと考えてください。日本人スタッフと同じ目標を共有して育てていく姿勢が、施設全体のパフォーマンスを上げる鍵になります。
神奈川県で特定技能人材を受け入れるためのステップ

実際に採用を進めるとき、何をどの順番で動かすかを整理します。
介護分野特定技能協議会への加入
特定技能「介護」で外国人を受け入れる施設は、介護分野特定技能協議会への加入が義務づけられています。
協議会は、制度の適正な運用を確保し、受入れ機関同士の情報交換を促進するための組織です。
特定技能外国人の受け入れでとても大切な手続きですので、面接を行う前に忘れずに対応してください。
受け入れ上限を確認
事業所で採用できる特定技能外国人の人数は、介護業については上限が設定されていて、事業所単位で日本人など常勤介護職員(雇用保険被保険者)の総数が上限です。
国内労働者を雇用する機会を守るための措置で、採用計画を立てる際には上限を考慮し、必要な人材を計画的に確保することが求められます。
登録支援機関の選び方
登録支援機関は、特定技能外国人の生活や仕事をサポートする業務を、介護施設である受入れ機関に代わって行う組織です。
支援内容には、事前ガイダンス、出入国時の送迎、住居確保、生活オリエンテーション、日本語学習の機会提供、相談対応、定期面談などが含まれます。これらをすべて自社で行うのは負担が大きいので、多くの施設が登録支援機関に委託しています。
選ぶときに見るべきポイントは、介護分野の支援実績、対応している母国語の幅、緊急時の対応体制、費用の透明性です。
母国語対応については、ベトナム語、ネパール語、インドネシア語、フィリピン語、ミャンマー語など、自施設で採用する可能性のある国の言語に対応しているかを確認してください。
費用についても、月額料金だけでなく、想定外の追加費用が発生しないかを契約前に確かめておくと安心です。
求人募集から内定までの流れ
採用の一般的な流れは、おおむね次のようになります。
まず人材紹介会社に求人を出します。海外現地で試験に合格した候補者、または国内にすでに在留している候補者のなかから、書類選考と面接を経て採用を決めます。
面接はオンラインで行うことが多く、複数回に分けて実施するケースもあります。
採用が決まったら、雇用契約を結び、在留資格の申請手続きに入ります。海外から呼び寄せる場合はビザの申請、国内にいる候補者の場合もビザの変更申請が必要です。
海外からであれば、書類の準備から入国・就労開始までは、おおよそ3〜6カ月、国内から転職なら2~3ヶ月を見込んでおくとよいでしょう。
採用前に知っておくべき費用

特定技能外国人を1人受け入れるときに発生する費用は、大きく初期費用と毎月のランニングコストに分かれます。
初期費用には、人材紹介会社への紹介手数料(30万〜50万円程度)、入国時の渡航費、住居の初期費用、健康診断費などが含まれます。これに、海外から呼び寄せる場合は在留資格認定証明書の取得に関わる行政書士費用などが加わります。
1人あたり初期費用の総額は50万〜80万円ほどを目安に考えるとよいでしょう。
毎月かかるコストは、給与(日本人と同等以上)、社会保険料、登録支援機関への委託費(1人あたり月2万〜3万5,000円が相場)、住居の家賃補助などです。
なお、タイミングによっては国や神奈川県が出す補助金等がありますので、各種HPをチェックするとよいでしょう。
受け入れ後の定着支援|長く働いてもらうための環境づくり

採用がゴールではなく、長く活躍してもらうことが大切です。特定技能外国人の定着のための取り組みを整理します。
日本語・生活支援で押さえるべきポイント
特定技能外国人が安心して働けるかどうかは、職場と生活の両面で決まります。
職場では、日本語能力に応じた指示の出し方を工夫することが大切です。専門用語をそのまま使わず、やさしい日本語に置き換える、図解やマニュアルを活用する、新人指導の担当者(メンター)を決めておく、といった配慮が定着率に直結します。
生活面では、住居の手配だけでなく、銀行口座の開設、携帯電話の契約、市役所での手続き、近隣の医療機関の情報共有まで丁寧にサポートします。
地域の同郷コミュニティとつながる機会を作ると、孤立を防げます。母国の家族と気軽に連絡を取れる環境(Wi-Fi整備など)も意外と重要なポイントです。
先行施設の成功事例と失敗事例から学ぶ
成功している施設に共通するのは、「外国人スタッフを特別扱いせず、戦力として育てる文化」を持っている点です。
日本人と同じ評価制度を適用し、能力に応じて昇給・昇格の道を用意している施設は、定着率が高い傾向にあります。介護福祉士の資格取得を後押しして、在留資格「介護」への切り替えまで見据えているケースもあります。
一方で失敗するパターンは、「日本語ができないから単純作業だけを任せる」「他のスタッフとの交流が少ない」「家族のような関わりがない」といった、孤立を生む環境です。
せっかく採用しても1〜2年で離職され、また採用コストをかけ直すという悪循環に陥ります。受け入れる前に、自施設の体制が「外国人スタッフを迎え入れる準備ができているか」を冷静に点検することが、成功への第一歩になります。
特定技能介護の採用を成功させるために
神奈川県は介護人材の確保が厳しい地域で、特定技能制度は即戦力を確保する有効な手段です。
制度の理解、受入れ機関としての要件確認、登録支援機関の選定、費用と補助金等の確認、そして受け入れ後の定着支援まで、一連の流れを押さえることで採用は前に進みます。
ただ、初めての受け入れには分からないことが多く、判断に迷う場面も出てきます。
そんなときは、まず介護分野の特定技能採用に詳しい支援機関や人材紹介会社に相談してみるのが一番の近道です。
施設の状況に合わせた採用プランや情勢を踏まえた最新情報をまとめて教えてもらえます。
以上となりますが、当記事があなたの施設にとって最適な一歩となれば幸いです。

