銀行員は「安定した仕事」と言われます。しかし現場で働く人の多くは、安定の裏で悩みを抱えている状況です。
数字に追われる緊張感、家庭との両立の難しさ、そして将来に対する漠然とした不安…。こうした現実に直面し、「このまま働き続けて大丈夫だろうか」と感じる銀行員は少なくありません。
そこで本記事では、銀行員の転職をめぐる以下の6つのテーマを解説します。
- 銀行員が転職を考える理由
- 他業界で活かせる銀行員の強み
- 行きやすい転職先と適正
- 年代別に見る転職のポイント
- 転職活動の進め方と注意点
- 後悔しないためのチェックリスト
転職を迷っている方も、将来のキャリアを真剣に考えたい方も、最後まで読むことで自分に合った選択肢が見えてくるでしょう。
銀行員が転職を考える理由
「このまま働き続けて大丈夫だろうか」と感じるのは、多くの銀行員が一度は通る道です。転職を考える主な理由は次の3つになります。
- ノルマや数字のプレッシャー
- 全国転勤や家庭との両立の難しさ
- 将来のキャリアや収入への不安
ノルマや数字へのプレッシャー

銀行員の仕事は、常に「数字」と隣り合わせです。融資の件数や新規顧客の獲得数など、目標が毎月課されます。
こうした数値目標は、評価や昇進に直結するため、心身に大きな負担を与える要因となるのです。
評価と昇進に直結する数値目標
目標を達成できなければ評価が下がり、昇進やキャリアに影響します。金融庁も「販売ノルマ偏重の営業は不適切な取引を招く可能性がある」と注意を呼びかけている中、現場の銀行員は顧客と会社の関係に板挟みを感じているケースもあります。
全国転勤と家庭との両立
銀行員のキャリアでは、数年ごとの転勤が避けられません。経験を広げる機会となる一方で、家庭に大きな負担を与えます。転勤はキャリア形成の機会である反面、家庭の教育や介護に深刻な影響を及ぼす現実が控えているのです。
子どもの教育への影響
厚生労働省の調査によると、転勤によって「育児や教育に影響が出た」と答えた人は全体の約4割にのぼります。受験期の転校や生活環境の変化は大きなリスクです。
介護や家族生活の困難
親の介護を担う世代にとっても、遠方への転勤は大きな壁です。単身赴任になれば生活費の負担も増え、家庭の安定が揺らぎます。
家庭の安定を守るため、転職を選ぶ銀行員も少なくありません。
将来のキャリアや収入への不安
銀行は今、大きな変化の波に直面しています。低金利政策や人口減少により、従来の融資中心のビジネスモデルは収益を上げにくくなっています。
こうした背景から、「定年まで安泰」という従来の安心感が揺らぎ始めているのです。
金融業界全体に広がる変化
日本銀行の「金融システムレポート」でも、企業の借入需要の縮小による収益力の低下が指摘されています。そこで、支店の統廃合やリストラも現実味を帯びています。
銀行員が抱く将来不安
「定年まで安泰と思っていたが、突然リストラの話を聞いて不安になった」という声もあります。そのため、自分でキャリアを選び、早めに転職したいと考える銀行員が増えているのです。
銀行員の転職は難しい?転職市場における銀行員の強み

『銀行員の転職は難しい』と思われる方もいらっしゃるようですが、実際は、どの業界でも必要とされる普遍的な力を持っており、その中でも特に評価されやすいのは次の5つです。
- 財務分析やリスク管理
- 法令順守やコンプライアンス意識
- 顧客対応・交渉力
- 目標意識
- 組織内で成果を出すマネジメント力
銀行員の経験は「業務の特殊性」ではなく「汎用性の高さ」に価値があり、業界も広めに選択できる傾向にあります。
銀行員が行きやすい転職先
銀行員の経験は幅広い業界で評価されています。特に人気があるのは、保険・証券・不動産業界、事業会社の財務・経理部門、コンサルティング、公務員です。ここでは代表的な転職先を詳しく見ていきましょう。
保険・証券・M&A仲介・不動産業界への転職
銀行員が持つ金融知識や営業力は、保険・証券・M&A仲介・不動産の業界で即戦力として評価されています。特に不動産業界では、融資やローンの仕組みに詳しい人材が少なく、「銀行出身=即戦力」と見なされやすいのが特徴です。
人材紹介エージェント・IT・医療など異業種での営業
多業種を相手に営業で培った幅広い知見やスキルは、異業種の営業でも活かせます。特に目標に対する意識が高いのは、転職先でも重宝される傾向にあります。
投資ファンドやコンサルティングファーム
金融の知識とあわせ、決算書が読めて交渉力のある銀行員は投資ファンドやコンサルティングファームへの転職もしやすいです。人気のある職種ではありますが、銀行員の経験があれば転職の可能性はあります。
事業会社の財務・経理部門
銀行員が培った知識は、企業の財務健全性を守る「健康診断」として活かせます。資金繰りやリスク管理の経験は経営に直結するため、財務や経理分野で銀行出身者は重宝されるのです。
経理・財務分野は、AIや自動化が進展する中でも専門性の高い職種として人材需要が継続すると予測されています。
経済産業省の「未来人材ビジョン」では、事務職の一部は自動化の可能性が高いとされる一方で、高度な判断力や専門知識を要する職種は今後も必要とされると分析されています。
銀行員の知識が活きる現場

企業の財務健全性を支える役割は、単なるルーチン業務にとどまらず、資金繰り・リスク管理・経営判断への貢献など、銀行員が培った知識を直接活かせる領域です。
実際に銀行からメーカーの財務部門へ転職した男性は「毎月の資金繰りや決算作業は銀行時代の知識がそのまま役立った」と話しています。銀行での「お金の点検作業」を、自社経営に活かすことで、経理・財務職は企業の中枢を担う存在となるのです。
公務員に転身
銀行員が公務員に転職する大きな理由は、「安定と地域に根ざした働き方」を求める声が強いからです。銀行では数年ごとの転勤が一般的で、そのたびに家族の生活や教育環境が揺さぶられます。
さらには倒産やリストラのリスクも限りなく低いため、長期にわたり安定して働ける点が、大きな魅力といえるでしょう。実際に銀行から市役所に転職した40代男性は、「給与は大きく変わらなかったが、子どもの転校を避けられ、家庭が安定した」と話しています。
年代別の転職事情

転職は「いつ動くか」で、選べる道も成功のカタチも変わります。20代・30代・40〜50代では、社会から期待される役割も異なり、転職市場で評価されるポイントも大きく違います。
自分の年代に応じた強みを把握することが、転職成功の近道となります。
20代の転職
20代は「柔軟性」と「成長の余地」が最大の武器です。まだキャリアが浅いため、企業は「これから学べる人材」として高く評価する傾向が強くあります。そのため、異業種含め幅広い転職がしやすいです。
30代の転職
30代は「即戦力」として期待される年代です。そのため、30代でも後半になればなるほど、異業種へ行けるとしても銀行で培ったスキル以外のポジションは行きづらくなります。しかし、ご自身の経験を活かせるポジションが見つかれば、給与アップはもちろん、やりがいのある仕事も見つかるはずです。
40~50代の転職
40~50代の転職は管理職や専門性を評価されれば、高い給料で転職も可能です。なお、金融業界内での転職はしやすいかもしれませんが、異業種となると持ち前のスキルを活かせるポジションに限定され、案件は少ない可能性があります。
とはいえ、他業界と比べるとスキルの汎用性から異業種の求人案件は多い傾向です。
後悔しない転職をするためにはどうすべきか?
転職を成功させるためには、「自己分析」「情報収集」「戦略的な行動」が欠かせません。どんなにスキルがあっても、それを正しく整理し、相手に伝えられなければ評価されにくいのが現実です。
ここでは、銀行員が転職活動を進めるうえで特に大切な3つのステップを紹介します。
- 転職サイトやエージェントの活用
- 自己分析・キャリアの棚卸し
- 面接での自己PR
転職サイトやエージェントの活用
転職活動は、信頼できる情報源を持つことから始まります。そこでお勧めなのは業界専門エージェントで、一般には公開されない「非公開求人」が紹介されることがあります。
自分に合った求人と出会うには、業界に詳しいエージェントを通じて情報を集めるのが近道です。 職務経歴書の添削や面接対策など、転職支援のサービスも充実しています。
自己分析・キャリアの棚卸し
転職活動では、自分の経験や強みを客観的に言語化する力が求められます。銀行員の場合、次のように業務成果を数字で整理することで、説得力のある自己PRが可能になります。
- 新規融資件数を○件獲得
- 不良債権を△億円削減
- 法人顧客を○社新規開拓
成果だけでなく、工夫した点や他の職場でどう活かせるかも整理しておきましょう。 キャリアの棚卸しでは、過去の業務を時系列で振り返ると整理しやすくなります。
「どんな課題に取り組んだか」「どんな成果を出したか」を一つずつ書き出すのがおすすめです。 こうした準備が、面接での説得力ある自己PRにつながります。
オススメの転職先はあなたの意向と特性次第
どれだけ良いことを面接でアピールできて勤務地や給料が好条件の会社へ入社しても、理念やカルチャーと合った転職先に行かないと長続きしません。
そのため、勤務地や給料などの条件だけでなく、自己分析をする中で自身の意向や特性を浮き彫りにし、意向と特性に合った会社へ転職するようにしましょう。
また。内定にサインする前に、気になることがあれば遠慮せず担当人事や働いている社員の方へ確認することが大事です。
まとめ

銀行員の転職は「難しい」と思われがちですが、実際には培ったスキルは他業界で高く評価されます。これらは普遍的で、多くの業界に求められる能力です。本記事では、銀行員の転職に必要な視点を以下のように整理しました。
- ノルマや転勤など「銀行ならではの悩み」があること
- 財務分析や交渉力といったスキルは多方面で活かせること
- 若いほど転職先は幅広い
- 自分の価値観を整理し、情報を集め、意向と特性に合った選択をすること
転職はゴールではなく、新しいキャリアのスタートです。大切なのは「今の不満から逃げること」ではなく、未来に向けて自分がどう生きたいかを選び取ること。
最後になりますが、本記事があなたの転職の参考になれば幸いです。