特定技能外国人が日本での新生活をスムーズに始めるためには、生活オリエンテーションが重要な役割を果たします。

この生活オリエンテーションとは、日本で暮らすための基本的な情報やルールを提供し、新生活をスムーズに始められるようサポートするために実施されるものです。

本記事では、生活オリエンテーションで提供される具体的な内容やその進め方、さらに注意点について専門家の視点から詳しく解説します。

生活オリエンテーションの目的と内容

生活オリエンテーションとは、1号外国人支援計画書に記載がある義務的支援のひとつです。

これは特定技能外国人が日本での生活や仕事に必要な知識やルールをしっかり理解してもらうための時間であり、特定技能外国人が十分に理解できる言語で説明することが決められています。

また、実施時間は目安として8時間以上が必要と考えられています。

日本での生活情報

日本での生活情報

生活ルールやマナー 

日本では、公共の場での秩序や周囲への配慮が重視される文化があります。この文化を説明することで、ルールの重要性を理解しやすくなります。

具体的には、ゴミの分別方法や夜間の騒音、喫煙に関するルールや公共交通機関でのマナーなどを詳しく説明し、実際のシチュエーションを用いてどのように行動すべきか示します。これらのルールを理解し実践することで外国人がトラブルなく日本社会に溶け込む手助けをします。

生活必需品等の買い方

日常の買い物に最適な近隣店舗の位置を、地図やアプリで調べる方法を案内し、生活圏内にどのような店舗があるかを確認できるようにします。特に、スーパーマーケットやコンビニエンスストア、ドラッグストアなどの場所を把握することは、スムーズな生活の第一歩です。

また、商品の取り扱いやレジでの並び方など、日本の買い物には特有のマナーやルールがありますので、事前にこれらを説明しておくことが重要です。さらに、支払い方法についても触れ、現金に加えてキャッシュレス決済の具体的な活用方法を示し、実際の支払いの流れを理解してもらいましょう。

そして、ネットショッピングやポイントカードの活用方法についても説明し、便利に買い物ができるようサポートします。

交通ルール・交通機関の利用方法

公共交通機関の利用については、外国人にとって特に重要な情報となります。まず、生活する地域で利用できる公共交通機関の種類や特徴、通勤に最適なルートを明確に説明します。

また、右側通行や信号機のルール、電車やバスの乗り方、ICカードの使い方など、日本独特の交通事情を説明しましょう。特に自転車の利用規則は外国人には馴染みがない場合が多いので、自転車登録の方法から損害賠償責任保険への加入についても合わせて詳細に案内することが重要です。

金融機関の使い方

銀行口座の開設方法やATMの利用方法、キャッシュレス決済の普及状況などを伝えます。

特定技能外国人は海外送金をする場合が多いので、特に振込の方法を具体的に説明し、金融機関の利用可能な時間についても詳しく案内します。

手数料に関しても事前に把握しておくことで、予期せぬ費用を避けることができます。また、会社の年末調整では送金をした証明書が必要になることもあるので、いつでも記録を出せるようにしておくことも案内しておくとよいでしょう。

給与の受け取りや公共料金の支払いなどについても、日常生活に欠かせない金融知識を提供し外国人が安心して金融機関を利用できるようサポートします。

医療機関の利用方法

医療機関の利用方法

症状別に利用可能な医療機関を把握し、どの医療機関にかかれば良いのかを具体的に説明します。また、受診方法についても詳細に案内し、保険証を持参することの重要性を伝えます。

さらに、アレルギーや宗教上の理由により治療に制限がある場合は、必ず医療機関にその旨を説明することが重要です。特に、緊急時の対応方法はしっかりと伝える必要があります。

これらの情報を提供することで、適切な治療を受けることができるようになります。

災害情報の入手方法

日本は自然災害が多い国であるため、適切な情報収集が重要です。公式の気象庁のウェブサイトや関連するアプリを活用することで、最新の警報をリアルタイムで確認できます。

また、災害情報については、各市町村の公式サイトや地域防災アプリを利用することで、具体的な避難指示や重要な情報を迅速に入手できます。さらに、防災訓練に参加することをお勧めすると良いでしょう。

違法行為の例

日本では法律が非常に厳しく守られています。交通違反や喫煙、アルコールに関する法律など、違法行為の例を挙げて説明することが重要です。

例えば、交通ルールを守らずに自転車やオートバイまたは車を運転すると罰則が科せられます、公共の場での喫煙が制限されている地域では、指定された場所以外での喫煙は違法です。

また、大麻や覚醒剤などの違法薬物を所持する行為も厳しく取り締まられています。これらの情報を具体的に提供することで、無意識のうちに違法行為を犯さないよう注意を促すことができます。

公的機関への手続き情報

公的機関への手続き情報

住居地の届出

日本に住む場合は、住民票の登録が必要です。引っ越しをした場合には、速やかに新しい住所を市区町村役場に届け出ることで、住民票の変更が行われます。

この手続きは、税金や社会保険などに影響を与える重要なものです。また、はじめてマイナンバーカードを申請する場合は、このタイミングで申請方法を確認したり必要な書類を請求することで手続きがスムーズに進みます。

社会保険や税に関する手続き

健康保険や年金などの社会保険の加入手続き、また所得税や住民税に関する情報も重要です。社会保険の加入手続きや税務署への申告は、勤務先から指示されることが一般的ですが、状況によっては税金未納の確認や支払い方法、そして控除についても案内します。

これにより、健康保険や年金、雇用保険などの制度を適切に利用できます。

受け入れ企業に関わる届出

受け入れ企業は特定技能外国人に関する情報を、必要に応じて出入国在留管理庁や関連機関に報告することが求められるため、特定技能外国人には労働契約や就業時間に関する書類の提出、また就労ビザの変更や更新など、企業と連携して行う手続きについても期限を守って手続きを行うよう説明が必要です。

その他の手続き

その他にも、運転免許の取得や銀行口座の開設、携帯電話の契約に必要な手続きなど、多岐にわたる手続きがあります。これらの手続きについても事前に情報を収集し、適宜説明します。

支援について

登録支援機関に支援を委託した際の支援機関に関する情報

特定技能外国人を受け入れる企業が登録支援機関に支援を委託する場合は、特定技能外国人が安心して相談や苦情を申し出ることができるように支援担当者の氏名、電話番号、メールアドレスなどの連絡先を事前に通知することが求められます。

いつでも必要なサポートをスムーズに行える体制を整えておくことが重要です。

相談・苦情の申出ができる公的機関の連絡先

万が一のトラブルや不安を抱えた場合、相談や苦情の申出ができる公的機関の連絡先を把握しておくことが重要です。

公的機関対応別連絡先一覧

相談内容相談先内容
入国・在留に関する相談地方出入国在留管理局在留資格やビザの更新、滞在に関する相談
労働条件・賃金・労働時間、仕事中のケガ労働基準監督署残業代の未払い、労働時間や休暇、仕事中のケガについての相談
失業給付・職業相談ハローワーク失業給付の申請、就職支援や職業相談
差別・いじめ等の人権問題法務局・地方法務局差別や職場でのいじめ、ハラスメントに関する相談
犯罪被害・交通事故警察署犯罪被害や交通事故の被害に遭ったときの相談
税金・健康保険・年金などの行政サービス市区町村住民税、国民健康保険、国民年金、その他の行政サービスについての相談
民事・刑事トラブル弁護士会、日本司法支援センター(法テラス)法的なトラブル(借金、賃貸トラブル、民事・刑事案件)についての相談
パスポートの紛失・更新大使館・領事館パスポートの紛失や更新、他の手続きに関する相談

これらの公的機関は、適切なアドバイスや支援を提供してくれるため、問題が発生した際に利用できるよう案内しておきましょう。

その他

特定技能オリエンテーション〜その他〜

医療機関の情報

日本での医療サービスの利用に関する情報もとても重要です。各地域の医療機関の一覧や、症状別の受診方法、保険証持参の必要性などを知ることで、安心して医療を受けることができます。

また、インターネットや電話による医療通訳サービスを導入している医療機関もあり、体制が整った病院の情報を把握しておくことで、医療の必要が生じた際に迅速に対応できます。

さらに、予期せぬ病気やケガで高額な医療費の支払いに不安を感じることもあり得ることです。そこでお金に悩まず安心して医療サービスを受けるため、医療通訳雇入費用等をカバーする民間医療保険についても、ひとつの手段として案内することができます。

防災・防犯などの情報

防災や防犯に関する情報は、特に日本の自然災害の多さを考慮することが重要です。地域の防災訓練や避難所の場所、犯罪の発生状況などを事前に把握しておくことで、安全に生活することができます。

また、火災予防もとても重要です。火災を起こさないためには、たばこの火の始末やコンロ・ストーブの取り扱いに気をつける必要があります。万が一火災が発生した場合に備え、消火器の正しい使い方を教えておくと安心です。

さらに、緊急事態に備えて緊急時連絡先を確認し、不審なことがあれば早めに相談するよう案内しておきましょう。

緊急時連絡先一覧

内容連絡先・方法説明
警察110番犯罪や事故に遭った際の通報先。最寄りの警察署や交番にも相談可能。
消防・救急119番火災や急病などの緊急時に連絡。救急車や消防車が出動。
海上保安庁118番海での事故や緊急事態が発生した際の通報先。
大使館・領事館各国の大使館や領事館の連絡先パスポートの紛失、災害時の支援情報などを提供。
緊急医療機関救急病院や医療機関への連絡救急の場合は直接119番に通報、もしくは近隣の救急医療機関に連絡。
気象情報の確認方法テレビ、ラジオ、インターネットの天気予報アプリ台風や大雨などの気象情報を確認できる。
避難指示・避難勧告テレビ・ラジオ、自治体の防災アプリ、防災無線災害発生時の避難指示や勧告が通知され、迅速に避難が可能。
災害時の避難場所自治体が指定する避難場所(学校や公民館など)事前に自治体の防災マップで最寄りの避難場所を確認しておく。

この他にも、携帯電話事業者が無料で提供する緊急速報メールを登録しておくと、災害時に素早く必要な情報を得ることができます。また、対応機種や受信設定についての詳細は携帯電話事業者の公式サイトで確認するよう説明しましょう。

法令違反の対応に関係した情報

法令違反に関する情報も、外国人が法律を遵守する上で大切です。入管法令や労働関係法令に関すること、人権侵害や年金制度など、日本で違法となりやすい行為の例やその場合の対応方法について理解しておくことで、無用なトラブルを避ける手助けとなります。

実施の方式について

オリエンテーションの時間について

特定技能外国人が、生活オリエンテーションで提供される情報を十分に理解するためには、最低でも8時間以上の実施が求められます。

また技能実習2号を良好に修了した者や留学生などが、同一機関で引き続き特定技能外国人として雇用される場合で生活環境に変化がないとしても、4時間に満たない実施は適切に行なったと認められません。

さらに、特定技能外国人が転職した場合には、転職先の環境に応じた内容の生活オリエンテーションを実施する必要があります。これは、各職場や地域の特性に応じた情報提供が重要であるためです。

実施方法

実施方法として、テレビ電話やDVDなどの動画視聴を利用することも可能ですが、その場合、外国人からの質問に対して適切に応答できるコミュニケーション体制を整備することが重要です。

質問に迅速かつ的確に対応できるよう、十分なサポート体制を確保しておくことが求められます。さらに、可能であれば、PDF形式の資料を配布し後で見返すことができるようにしましょう。

いつからいつまでに行うべきか

特定技能所属機関において、1号特定技能外国人が日本に入国した後、または在留資格の変更許可を受けた後に行う生活オリエンテーションは、外国人が日本での職業生活、日常生活、そして社会生活を安定的かつ円滑に行うために重要です。

このため、入国後または在留資格の変更後、できるだけ早急に実施する必要があります。また、個別の事情により1度ですべての情報提供が難しい場合には、数回に分けて実施することも可能です。

オリエンテーション時の注意点

オリエンテーション時の注意点

母国語など本人が正確に理解できる言語で行う

オリエンテーションは、参加者が正確に理解できる言語で行うことが非常に重要です。母国語を使用することで、情報の伝達がスムーズになり、参加者が安心して内容を理解できるように配慮することが求められます。

また、通訳の手配や母国語別のPDF資料を準備し、質疑応答に対応できる体制を整えておきましょう。

資料・動画などでわかりやすく説明を

視覚的な情報を活用し、理解を助けるための資料や動画を用意することが重要です。特にPDF形式の資料は、参加者が後で簡単に参照できるため、必要な情報をすぐに見つけやすくなります。

また、生活オリエンテーションは、1度に数人で実施されることも多いため、資料があると進行がスムーズになります。

確認書に署名をもらう

オリエンテーションの内容を理解したことを証明するために、参加者から確認書に署名をもらうことが重要です。

この確認書は、義務的支援が実施されたことの確認資料としても役立ちますので、しっかりと管理しておきましょう。

必要に応じて同行する

オリエンテーション中、特定の情報や手続きに不安を感じる参加者がいる場合は、必要に応じて同行してサポートすることが大切です。

個別のフォローを行うことで、参加者が自信を持って新しい環境に適応できるように支援します。

まとめ

まとめ:特定技能外国人に向けた生活オリエンテーションの内容とは

生活オリエンテーションを通じて、特定技能外国人が新しい生活にスムーズに適応できるよう配慮することは非常に重要です。

実施側は、特定技能外国人の配属先が異なる場合の事情を考慮し、事前にその地域について調査を行うことが望ましいです。また、その情報をまとめた各言語に対応している資料などを用意することも、円滑な情報提供のための鍵となります。

さらに個別サポートを提供することで、彼らの不安を軽減し、安心して新生活を始めるための基盤を築くことができます。適切な情報提供とサポートが、外国人労働者の生活の質を向上させるだけでなく、日本社会全体の受け入れ体制を強化することにもつながります。

このような取り組みによって外国人が新しい環境に早く慣れ、より豊かな生活を送る手助けとなるでしょう。