特定技能は、外国人が日本で働くための在留資格(ビザ)の種類の1つです。
一定の技能と日本語能力を持ち合わせていることが要件であるため、即戦力として雇い入れることができ、企業の人手不足解消に今注目されている資格です。
特定技能1号と2号は、それぞれ取得の条件も対象分野も異なります。そこで今回は特定技能1号と2号の違いについて、それぞれの特徴をわかりやすく解説します。
特定技能1号と2号の違い
特定技能1号と2号、それぞれの特徴は以下のとおりです。
特定技能1号 | 特定技能2号 | |
在留期間 | 通算で5年まで (1年・6か月または4か月ごとの更新) | 上限なし (3年、1年または6か月ごとの更新) |
技能水準 | 試験等で確認(技能実習2号を修了した外国人は試験等免除) | 試験等で確認 |
日本語能力水準 | 生活や業務に必要な日本語能力を試験等で確認(技能実習2号を修了した外国人は試験等免除) | 試験等での確認は不要 |
外国人の支援 | 支援計画の策定と支援の実施が義務 | 支援計画の策定や支援の実施は不要 |
家族の帯同 | 不可 | 条件を満たせば可(配偶者・子) |
永住ビザの取得 | 不可 | 条件を満たせば可 |
同じ特定技能という資格でありながら、取得の条件や内容は異なります。それぞれの違いについて、詳しく見ていきましょう。
在留期間
1号の在留期間は通算5年が上限です。
一度の申請で1年、6カ月、4カ月いずれかの期間が在留期間として認められるので、更新を繰り返すことで通算5年まで在留できます。
5年経過した後は特定技能2号、もしくは別の在留資格に切り替える必要があり、変更しない場合は帰国することになります。
一方で2号は在留期間の上限はなく、更新回数の制限もありません。更新を続ける限り日本に在留することが可能です。
永住ビザの取得可否
永住ビザは原則、「断続的に10年以上日本に在留しており、かつそのうち5年は就労資格または居住資格を持って在留していること」が要件です。
しかしこの5年の就労期間に特定技能1号は含まれないとされています。
たとえば留学で2年、技能実習で3年、特定技能1号で5年在留していた場合を考えてみましょう。10年の在留期間はクリアできますが、特定技能1号が5年の就労期間に含まれないため、永住許可要件を満たさないということになります。
また、この就労資格を持って在留する5年とは、永住ビザ申請の直近5年間である必要があります。そのため、特定技能1号から永住ビザへの切り替えはできないということになるのです。
一方、2号は在留期間の上限がなく、5年の就労期間にもカウントされるため、更新を続ければいずれ永住ビザの取得要件を満たすことができるでしょう。詳しくは出入国在留管理庁「永住許可に関するガイドライン」をご確認ください。
技能レベル
1号は特定分野に対する相当程度の知識と経験を要する、2号は熟練した技能を要するとされています。この技能レベルを証明するために、1号2号とも、試験合格が資格取得の要件となります。
ただし1号に関しては、技能実習2号を良好に修了していればこの試験が免除されます。
日本語
1号は技能試験と並行して、日本語試験にも合格する必要があり、求められるレベルは日本語能力試験N4以上です。ただし技能試験と同様に、技能実習2号を良好に終了していれば免除されます。
2号に関しては、日本語能力試験はありません。熟練した技能をもっているということは、仕事に支障がない程度の日本語能力を有していると判断されるためです。
外国人支援
1号は特定技能で雇用する外国人の支援計画を策定し、実施することが義務とされています。特定技能の採用には支援を含め、以下のような取り組みが必要です。
適切な雇用契約の締結 | 日本人労働者と待遇に差がないことが重要外国人が理解しやすいよう母国語で準備することも |
特定技能ビザの申請・更新 | 必要書類の準備など申請忘れがないよう管理することが大切 |
支援計画書の作成・実施 | 国から義務付けられている計画の策定就労前ガイダンスの実施生活オリエンテーションそのほか日本での生活全般のサポート など |
各種届出の作成・提出 | 定期的な届出や報告書の作成・提出 など |
自社では支援が難しい場合は、登録支援機関に委託することも可能です。
一方で2号は、1号のような支援体制は義務ではありません。しかし外国人労働者として働くことに変わりはありません。日本での生活や、日本人労働者との間で仕事が円滑に進むように、受入れ企業としてしっかりサポートすることが必要です。
家族帯同の有無
1号では家族帯同は認められていません。もし家族と一緒に在留を希望する場合は、配偶者も個別で就労資格または居住資格を取得する必要があります。子どもがいる場合は、配偶者の資格で家族滞在を取得することになるでしょう。
2号は家族帯同が認められています。ただし帯同できるのは、法律上有効に成立した婚姻に基づく配偶者と子どもに限られます。親兄弟を呼び寄せることはできません。
業種によっては2号が無いものも
特定技能の対象となる分野や業種は限られており、2024年11月現在、1号の対象は16分野です。一方で2号の対象は11分野となっています。
対象分野は法改正により、頻繁に内容が変わります。最新の情報は出入国在留管理庁HPをご参照ください。
2号で対象となっていない分野ではもちろん、特定技能として働くことができません。1号から移行して長期的に在留を希望する場合は、対象分野について注意しておく必要があるでしょう。
特定技能1号&2号の取得要件・方法
特定技能の取得要件や方法は、1号と2号それぞれで異なります。それぞれ詳しく見ていきましょう。
特定技能1号
特定技能1号の取得要件は以下のとおりです。
・18歳以上であること
・健康であること
・日本語能力試験N4レベル以上の日本語力を有していること
・技能試験に合格している、または技能実習2号を良好に修了していること
・適切な雇用契約を結んでいること
・保証金を徴収されていないこと
・失踪等の不正行為に関与していないこと
特定技能1号を取得するには、技能試験・日本語能力試験の両方に合格する必要があります。技能試験は各分野に関する基礎的な知識が必要なので、試験を受ける場合はしっかりと対策をしていきましょう。
試験は年間を通して国内外で行われていますが、分野・業種によっては試験の開催頻度が少ないものもあります。年1回の開催ということもあるため、試験日程をよく確認しておきましょう。
日程は各分野のHPをご確認ください。
参考URL:日本語能力試験JLPT、国際交流基金日本語基礎テストJFT-Basic
日本語試験ではN4以上の能力が求められます。試験は国内外で頻繁に開催されているので、早めに受験しておくと良いでしょう。試験日程はそれぞれの試験受付HPでご確認ください。
場合によっては技能実習から移行も可能
特定技能1号は試験合格のほか、技能実習から移行することも可能です。技能実習2号を良好に修了すれば、技能試験・日本語試験ともに免除されます。
ただし、技能実習で取り組んだ分野や業種が特定技能1号の対象ではない場合があります。もし移行を希望する場合は、分野・業種が移行対象かどうかよく確認しましょう。
特定技能2号
特定技能2号は、より熟練した技能を必要とする資格で、対象分野が1号ほど多くありません。しかし対象分野・業種は徐々に拡大してきており、今後は2号の資格を取る人が増えると予想されます。
なお、介護分野については、専門的分野である在留資格「介護」があるため、特定技能2号の対象とはされていません。
特定技能2号の取得要件は以下のとおりです。
・技能試験に合格
・特定技能1号での実務経験
・日本語能力(一部分野に限る)
技能試験の内容は分野ごとに決められていて、中には試験以外に特定の検定合格を要件としているものもあります。詳しくは各試験のHPをご確認ください。
日本語能力については試験が免除されています。ただし分野によっては、日本語能力N3以上に合格することが必須要件、とされることもあるのでよく確認しましょう。(漁業、飲食業など)
特定技能2号の難易度
2号の試験で求められる実務経験は、ほとんどの場合2年以上が必要です。1号の間に経験を積むことが必要ですが、1号は在留期間が通算5年と決まっています。計画的に実務を行わなければ、2年以上の経験を確保することは難しいでしょう。
同時に検定や試験に合格する必要があるため、試験対策を十分にしておく必要があります。熟練した技能を証明するためのハードルは高いと言えるでしょう。
技能実習との違い
技能実習と特定技能の違いは以下のとおりです。
特定技能 | 技能実習 | |
目的 | 即戦力確保による人手不足の解消 | 技能移転による国際貢献 |
転籍の可否 | 一定の条件で転職が可能 | 原則、転籍不可 |
給与 | 日本人と同等以上 | 最低賃金が基準 |
受入れ人数 | 企業ごとの制限なし(一部の分野を除く)ただし日本全体で受入れ数を制限 | 企業ごとに受け入れ枠の制限あり |
技能実習は日本で技術を習得し、母国へ持ち帰ってもらうことを前提とした制度です。日本の技術で諸外国の発展に貢献することを目的として制定されました。
一方で特定技能は、日本企業で人手不足にあえぐ産業分野において、即戦力として外国人雇用を推進するための制度です。技能実習と特定技能は、制度の仕組みや目的が全く異なるものなのです。
転籍・転職については、技能実習は原則、転籍は認められません。しかし特定技能は、一定の条件下で転職することができます。そのため技能実習から特定技能へ移行する際も転籍が可能です。
給与に関しては、特定技能はすでに一定の技能と日本語能力を持っているとして、日本人と同等以上の待遇が必要です。そのため給与も日本人と同等以上である必要があります。一方で技能実習は就労が目的ではないため、最低賃金を基準としている場合が多いでしょう。
技能実習は企業ごとに、日本人従業員の数に応じて受け入れられる技能実習生の数に制限が設けられています。
特定技能は企業ごとの制限はないため、日本全体での上限に達していない限り受け入れることができます。ただし、介護や建設業分野などは企業ごとに制限があるため注意しましょう。
まとめ
特定技能は日本の深刻な人手不足に対応するための重要な制度です。
1号から2号へ移行することによって長期的なキャリア形成が可能になり、永住を視野に入れた長期滞在もできます。長く働けるということは、働く外国人と受入れ企業、双方にとってのメリットとなるでしょう。
制度を利用する際はそれぞれの特徴や対象分野をよく理解し、キャリアプランに合わせて選択していくことが大切です。